加工技術FAQ (VA/VE)
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五軸加工とは?
1. 五軸加工とは?
五軸加工は、工具や加工物が5つの異なる軸で動けるマシニングセンターで行う加工法です。基本的な三軸(X、Y、Z)の動きに加え、回転軸(A軸、B軸またはC軸)を利用して、工具やワークピースを複雑に動かします。この結果、複雑な形状や曲面の加工が可能になり、非常に高精度な部品を製作することができます。
2. 五軸加工機の軸について
X軸、Y軸、Z軸:これは通常の三軸加工で、工具やテーブルが水平・垂直方向に動きます。
A軸:X軸周りの回転軸。ワークピースを傾ける動きに対応します。
B軸またはC軸:Y軸またはZ軸周りの回転軸。工具自体やテーブルが回転します。
この組み合わせにより、工具があらゆる角度からワークにアクセスでき、加工範囲が広がります。
3. 五軸加工の利点
●複雑な形状加工:航空宇宙産業や医療機器、モータースポーツなどで使用される高精度なパーツに適しており、複雑な形状や曲面の加工が可能です。
●加工時間の短縮(工程集約):複雑な加工でも一度に完了できることが多いため、時間を短縮できます。また、セットアップ時間や段取り替えを減らせるため、全体的な効率も向上します。
●工具寿命の延長:最適な角度から工具を当てることができるため、工具摩耗を減らし、寿命が延びる傾向にあります。
4.五軸加工での工程集約について
🔵工程集約の概念
工程集約とは、複数の加工ステップを一つの作業でまとめることを指します。五軸加工機を使えば、ワークピースを一度のセッティングで様々な方向から加工でき、複数回に分ける作業を一回で完了させることが可能です。
🔵工程集約のメリット
再固定の削減:五軸加工では一度のセットで複数の面を加工でき、再固定の手間を大幅に減らせます。
複数面の同時加工:異なる面を一度に加工でき、工程をまとめられます。
高精度な連続加工:再固定のズレがなくなり、精度が向上します。特に高精度が要求される分野で効果的です。
加工時間の短縮:セットアップや位置決め作業が減り、全体の加工時間が短縮されます。
🔵工程集約の例
(1) 複数の面の加工
五軸加工では、工具の角度を調整し複数の面を同時に加工できます。
(2) 複雑な形状の一度に加工
五軸加工機は複雑な形状を一度に処理でき、セットアップの手間を軽減します。
(3) 穴あけ、タップ、フライス加工の同時実行
五軸加工機は、工具を自動で切り替えて複数の加工を集約できます。
工程集約によるトータルコストの削減
労力削減:セットアップや再固定作業が減少。
設備コスト削減:五軸加工機一台で多くの加工が完了。
工具の効率的な使用:工具の摩耗が均一になり寿命が延びます。
🔵工程集約を実現するためのポイント
CAMプログラムの最適化:複数工程を一度に処理するプログラムが重要。
自動化の利用:工具交換や位置決めを自動化することで効率が向上します。
五軸加工は、生産性向上とコスト削減に直結し、高精度や複雑な製品に有効です。
5. 五軸加工機の種類
●テーブル傾動型:ワークピースを固定したテーブルが回転・傾動するタイプ。重いワークや大きなワークには適していないが、柔軟な回転操作が可能。
●ヘッド傾動型:工具を保持するスピンドルヘッドが回転・傾動するタイプ。大きなワークにも対応でき、ヘッドの動きで複雑な形状を作り出します。
●テーブル・ヘッド複合型:テーブルとスピンドルヘッドの両方が回転するため、最大限の自由度と柔軟性を提供します。
6. 注意点
●コスト:五軸加工機は非常に高価です。また、五軸加工に必要なプログラミングやシミュレーションも高度な技術を要求するため、教育やソフトウェアへの投資が必要です。
●プログラミングの複雑さ:三軸加工に比べてCAM(コンピュータ支援製造)プログラムが複雑で、経験豊富なエンジニアが必要です。
7. 五軸加工の用途
航空機エンジンのブレード、タービン、プロペラ、複雑な医療機器のインプラントなどは、通常、五軸加工で製造されます。これらの部品は曲面が多く、非常に高い精度が求められるため、他の加工方法では実現が難しいことが多いです。
五軸加工は現代の製造業において、特に高度な技術と品質を要求される分野で不可欠な技術となっています。